Béla(ベッラ)は、作曲家Bartók Béla(1881-1945)の作曲理論に見受けられる「中心軸システム」を取り入れることで、新たな「楽譜」であり「建築」であるような空間を表現するプロジェクトです。
60度回転させたre-oriented circle of fifth(レ軸五度圏)で,ペンタトニックスケール(五音音階)とダイアトニックスケール(七音長音階)は左右対称となる.また,ダイアトニックスケールの7芒星はペンタトニックスケールの5芒星にfa,tiの二音を付加したものになっている.
 バルトークはマジャール(ハンガリー)民謡の中にひんぱんに見つけられる五音音階を根源的な音階として重要視していた。 プリミティブな五芒星から,情感のあるfa,tiを含んだ七芒星,そして臨時記号を含んだ半音階へと音階が〈拡張〉されていくことが、レ-五度圏では上から下へとうまく説明される。
アルノルト・シェーンベルクのようなセリエル音楽の作曲家はオーセンティックな(ドイツ)西洋音楽の批判的拡張として,十二音を無差別にあつかう技法へとジャンプした.これに対してバルトークの音楽には,かれが念入りに採集した故郷の民謡,オーセンティックな西洋音楽,そしてシェーンベルクの十二音技法それらすべての融合ともいえるような図式がよみとれる.
もちろん音楽は「図式」そのものではないし,図式を語りつくしても音楽は語り尽くせない.バルトークが実際にこのような図形イメージを持っていたかも定かではない(*).
ここに示したのはバルトークのオペラ〈青ひげ公の城〉のとある主題から,和声-旋律-低声部をとりだして,それぞれ軸にそって描画した,〈建築〉のこころみである.
このようにして,安定と不安定,弛緩と緊張を空間に可視化することはできないだろうか.
この試みはいまなお継続中である.
*エルネ・レンドヴァイという音楽学者がバルトークの音高選択にこのような図形的性格を見出したが,現在ではこれをバルトークと結びつける証左がないことが指摘されていて,なかば眉唾あつかいされている.しかしこの解釈メソッドはジャズのスケール理論などにも応用され,今日も密かに生きて音楽の制作や解釈に貢献していることは付言しておきたい.
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